「子どもがお金に興味を持ち始めたけれど、何から教えればいいのだろう」と迷うことがあります。
硬貨の名前を覚えることから始めるのか、金額を数える練習をするのか、それとも実際に買い物をさせてみるのか。お金にはいくつもの要素があるため、最初の一歩が分かりにくいテーマです。
幼児にお金を教えるときは、いきなり計算問題から始める必要はありません。まずはお買い物ごっこで「商品を選ぶ」「お金を払う」といった買い物の流れに親しみ、そこから硬貨の種類や金額へと少しずつ進めていきます。
この記事では、硬貨と金額の理解を中心に、家庭で取り組みやすい5つのステップを紹介します。

幼児にとって、お金はなぜ難しいのか
子どもに数を教えるときは、積み木やおはじきを並べて「1、2、3……」と数えることができます。ところが、お金では「何枚あるか」と「いくらあるか」が同じではありません。
たとえば、10円玉1枚は枚数では「1枚」ですが、金額は「10円」です。一方、1円玉が10枚あれば、枚数は「10枚」でも金額は同じ10円になります。
そのため、お金を数えるには、物の数を数えることに加えて、
- 硬貨の種類を見分ける
- それぞれの硬貨が何円なのかを知る
- 複数の硬貨を合わせた金額を考える
- 持っている金額と商品の値段を比べる
といった理解が必要になります。
数字を読めたり、物の数を数えられたりしても、お金になると急に迷うことがあるのはそのためです。
硬貨の枚数と金額の違いでつまずきやすい理由については、「子どもがお金を数えにくいのはなぜ?硬貨の枚数と金額のつまずきを解説」で、もう少し詳しく紹介しています。
ステップ1 まずは、お金を使わずにお買い物ごっこをする
最初から硬貨を出さなくても大丈夫です。
商品を並べ、お店の人とお客さんになって、
「これをください」
「どうぞ」
とやり取りするところから始めます。
おもちゃの食べ物や身近なものを商品にしてもよいですし、商品カードを使っても構いません。
商品を並べて、お店を作る
野菜、お菓子、日用品などを並べてお店を作ります。
「食べ物はこっち」「日用品はこっち」と仲間分けをしてみるのも一つの遊び方です。
この段階では、お金を正しく数えることよりも、たくさんの商品から欲しいものや頼まれたものを見つけ、「買い物をする」という流れに親しむことを大切にします。
頼まれたものを選んでみる
次は、
「りんごを買ってきて」
など、簡単なおつかい遊びにしてみます。
最初は1つだけ。できるようになったら2つ、3つと少しずつ増やします。
買い物リストを見ながら探せば、絵や文字と商品を見比べながら選ぶ経験になります。
口頭で聞いてから商品を取りに行く場合は、聞いた内容を覚え、店の中から探して選ぶ遊びになります。
子どもの様子を見ながら、取り組みやすい方法から始めます。
ステップ2 硬貨の種類と金額を一つずつ確かめる
お買い物ごっこの流れが分かってきたら、少しずつお金を加えていきます。
最初からいろいろな種類の硬貨を混ぜる必要はありません。
まずは、
「これは1円」
「これは10円」
「これは100円」
と、一つずつ確かめます。
その後、いくつかの硬貨を並べ、
「10円玉はどれかな?」
「100円玉を探してみよう」
と見つけてもらいます。
硬貨の色や大きさ、書かれている数字も一緒に見比べます。
大人が特徴をすべて説明するよりも、「どこが違うかな?」と一緒に見てみると、子ども自身が気づけるところもあります。
ステップ3 同じ硬貨を使って金額を作る
硬貨を見分けられるようになったら、次は同じ種類の硬貨だけを使って金額を作ります。
たとえば10円玉なら、
10円玉1枚で10円。
2枚で20円。
3枚で30円。
と、実際に硬貨を並べながら確かめます。
いきなり1円玉、10円玉、100円玉を混ぜるよりも、まずは同じ硬貨を増やしたときに金額がどう変わるのかを見る方が考えやすくなります。
「30円はいくら?」と数字だけで答えさせるのではなく、硬貨を1枚ずつ動かしながら、
「10円、20円、30円」
と確かめてみましょう。
ステップ4 位ごとに分けて、2桁・3桁の金額を作る
同じ種類の硬貨で金額を作れるようになったら、1円玉・10円玉・100円玉を組み合わせてみます。
たとえば214円なら、
200円
10円
4円
に分けます。
さらに、
200円は100円玉2枚
10円は10円玉1枚
4円は1円玉4枚
と置いていきます。
214という数字をそのまま考えるのが難しい場合でも、百の位、十の位、一の位に分けると、数字と硬貨を対応させやすくなります。
この段階では、できるだけ少ない枚数で支払うことを目標にする必要はありません。
まずは、数字のどの部分が、どの硬貨とつながっているのかを目で見て確かめることを優先します。


※おつかいでお金のおけいこより
ステップ5 両替・合計・持っているお金で買えるものへ広げる
金額を作れるようになってきたら、お買い物ごっこをさらに発展させます。
たとえば、
- 同じ金額を違う硬貨で作る
- 5円玉・50円玉・500円玉も使ってみる
- 2つの商品を買ったときの合計を考える
- 財布にあるお金で何が買えるか考える
といった遊びへ進めます。
100円は100円玉1枚だけではありません。
50円玉2枚でも100円になりますし、10円玉10枚でも100円です。
「100円をほかのお金でも作れるかな?」
と実際に並べてみると、同じ金額でもいろいろな表し方があることを確かめられます。
また、120円を持っているなら、
「このお金でどの品物が買えるかな?」
と商品と財布の中身を比べる遊びもできます。
ここまで進むと、単に硬貨を覚えるだけではなく、実際の買い物に近い形でお金を考えられるようになります。
難しくなったら、使う硬貨や商品の数を減らし、できていたところまで戻って構いません。
全部を一度に教えなくても大丈夫
ここまで5つのステップに分けて紹介しましたが、「何歳になったらステップ3」と年齢だけで決めるものではありません。
子どもが今どこまで分かっているのかを見ながら進めます。
硬貨の種類で迷っているなら、金額の計算を増やす前に硬貨を見比べる。
30円を作るところで迷うなら、いったん10円玉だけに戻る。
2桁・3桁になると難しくなるなら、位ごとに分けてもう一度並べてみる。
できない問題を何度も繰り返すより、どこから分からなくなったのかを見つけて、一つ前の段階へ戻ることも大切です。
また、子どもが迷ったときにすぐ答えを伝えるのではなく、
「10円玉はどれかな?」
「百の位はいくつ?」
「あといくら必要かな?」
と、見る場所を少し絞ってみます。
自分で見つけられそうなところは、少し待ってみる。それも、お金の学習では大切にしたい時間です。
実物の硬貨を使うときは大人が見守る
実物の硬貨は小さいため、幼児が使用するときは大人がそばで見守ります。
活動が終わったら、子どもの手の届かない場所へ片づけてください。
まだ物を口に入れることがある場合などは、実物の硬貨ではなく、おもちゃのお金や硬貨の絵カードを使う方法もあります。
ドーナツ屋さんごっこからお金に親しむ「おかいもの知育 ドーナツセット」
「まずはお金の勉強というより、楽しいお店屋さんごっこから始めたい」という場合は、好きな食べ物を使ったお買い物遊びから入る方法もあります。
ココエデュの「おかいもの知育 ドーナツセット」は、ドーナツ屋さんになって注文遊びをしながら、お買い物やお金へと遊びを広げられるカード教材です。
お客さん役では、メニューを見てドーナツを注文します。
数字を使って注文したり、ひらがなを見ながら注文したり、注文カードを見て頼んだりと、子どもの様子に合わせて遊び方を変えられます。
店員さん役では、注文を聞き、覚えて、並んだドーナツの中から同じものを探します。
そして、この教材の大きな特徴が、注文カードの裏面がお金のカードになっていることです。
表面を使って、
「このドーナツをください」
と注文遊びをしたあと、そのカードを裏返せば、
「このドーナツはいくら?」
「どのお金を出せばいいかな?」
と、そのままお金のやり取りへ進めます。
お店屋さんごっことお金のおけいこを別々に始めるのではなく、同じ遊びの中で、注文からお会計へ少しずつ発展させられるようにしています。
必要な金額を作ったり、硬貨を見分けたり、持っているお金で買えるか考えたりと、慣れてきたら遊び方を広げられます。
お金の理解を段階的に進める「おつかいでお金のおけいこ」
もう少し段階的に、おつかい遊びから2桁・3桁の金額まで取り組めるようにした教材が「おつかいでお金のおけいこ」です。
商品カードを並べてお店を作り、買い物リストを見ながら商品を探すところから始められます。
その後、
商品を選ぶ
→ 硬貨を見分ける
→ 金額を作る
→ 2桁・3桁の金額を考える
→ 財布にあるお金で買える商品を探す
と、この記事で紹介した内容に合わせて使い方を変えていけます。
ラミネート加工済みのA4用紙6枚に、お店ごっこ用の商品カードや財布カードなどが収められています。商品カードは同じものが2枚ずつ入っているため、お店の商品と買い物リストを対応させて使うこともできます。
実物の硬貨は付属していません。硬貨を使う活動では、ご家庭にある硬貨を大人の見守りのもとで使用してください。

プリント学習とは違って手を動かしながら学ぶ具体物教材です。
▶ 「おつかいでお金のおけいこ」を見る
まとめ
幼児にお金を教えるときは、硬貨の名前や計算を一度に覚えようとせず、買い物の体験から少しずつ進めていきます。
- お金を使わず、お買い物ごっこをする
- 硬貨の種類と金額を一つずつ確かめる
- 同じ硬貨を使って金額を作る
- 位ごとに分けて、2桁・3桁の金額を作る
- 両替・合計・持っているお金で買えるものへ広げる
大切なのは、5つを早く終えることではありません。
今どこまで分かっているのかを見ながら、一つずつ経験を重ねることです。
お店屋さんになって遊ぶところからでも、普段のお買い物で値段を見るところからでも始められます。
「これは何円かな」「このお金で買えるかな」と、実際に見て、触って、動かしながら、お金と数字を少しずつ結びつけていきましょう。


