「結び方を何度見せても、途中で手が止まってしまう」
蝶結びを練習していると、最初は進めても、途中から紐の動かし方が分からなくなることがあります。大人が隣で見本を見せても、同じところで迷ってしまう。このようなとき、つい「まだ手先が器用ではないから」「もう少し大きくなればできるかも」と考えてしまいます。
しかし、蝶結びができない理由は、器用さや年齢だけとは限りません。
一連の動作のうち、どこで分からなくなっているのかを、まだ大人が見つけられていないこともあります。
蝶結びは、大人には一つのまとまった動作に見えますが、実際には、紐を持つ、交差させる、輪を作る、隙間に通す、引くといった細かな動きの積み重ねです。
この記事では、蝶結びが難しい理由と、お子さんのつまずきを見つけるために確認したいポイントを整理します。
蝶結びが難しいのは、判断することが多いから
蝶結びでは、手を順番に動かすだけでなく、それぞれの場面で細かな判断が必要になります。
たとえば、輪を作る場面だけでも、子どもは次のようなことを考えながら手を動かさなければなりません。
- どちらの紐を動かすのか
- 紐のどのあたりを持つのか
- 反対の手でどこを支えるのか
- どのくらいの大きさの輪を作るのか
- 作った輪をいつまで持っているのか
大人は、こうした判断をほとんど意識せずに行っています。そのため、子どもに教えるときも、「輪を作って」「こっちに回して」「ここへ通して」と、一つの言葉でいくつもの動きを伝えてしまいがちです。
ところが、まだ蝶結びの動きを理解していない子どもにとって、「ここ」「こっち」「そのまま持っていて」といった言葉は、必ずしも分かりやすい指示ではありません。
どの紐の、どの部分を、どこまで動かすのかが分からないまま、見よう見まねで進めることになります。
同じところで失敗しているとは限りません
蝶結びが完成しないと、毎回同じように失敗しているように見えるかもしれません。
しかし、実際には子どもによって止まる場所が異なります。
たとえば、次のような違いがあります。
- 左右の紐を交差させるところで迷う
- 結び目を作る途中で、紐の向きが分からなくなる
- 輪を作るたびに、持つ位置や大きさが変わる
- 紐を通す場所を探せない
- 通している途中で、先に作った輪を離してしまう
- 最後にどの部分を引けばよいか分からない
- 結べても、輪の大きさや紐の長さが大きく偏る
まず確認したいのは、「蝶結びができるか、できないか」だけではありません。
どこまでは一人で進められ、どの場面で迷い始めるのかを見ることが大切です。
家庭での練習は「最初から最後まで」だけにしない
蝶結びがうまくいかないと、完成するまで何度も最初からやり直したくなります。
しかし、途中の一工程だけが分からない場合でも、毎回最初から最後まで取り組むことになります。これでは、子ども自身も「何が分からないのか」を捉えにくくなります。
まずは大人が一度ゆっくり見せ、お子さんがどこで迷うかを観察してみましょう。
見るときのポイントは、次の3つです。
- 最初に手が止まる場所
- 持つ位置や動かす方向が、毎回変わる場所
- 持っていた紐を途中で離す、別の紐をつかむなど、動作が崩れる瞬間
こうした場所が、お子さんにとって、まだ動きや判断の基準が分かりにくい工程です。
つまずく場所が見つかったら、最初から通して繰り返すのではなく、その部分を分けて考えます。
すぐに大人が完成させるのではなく、「今、どちらの紐を動かそうとしているかな」「どこから分からなくなったかな」と、子どもと一緒に確かめることも大切です。
2色の紐だけでは分かりにくいこともあります
蝶結びの練習では、左右で色の異なる紐を使う方法がよく知られています。
色が違うと、「次にどちらの紐を動かすか」を区別しやすくなります。左右が分からなくなりやすい子どもには、助けになることがあります。
ただし、色を分けるだけでは解決しにくいつまずきもあります。
- 紐のどの部分を持つのか
- どのくらいの大きさの輪にするのか
- 作った輪をいつまで持っているのか
- 紐をどこへ通すのか
- 最後にどの部分を引くのか
このような部分では、「どちらの紐か」だけでなく、持つ位置や動かす方向、動作の終わりが分かることも必要です。
色分けをしても練習が進まない場合は、練習量が足りないと決めつけず、別のところで迷っていないかを見直してみましょう。
21工程に分けた理由
ココエデュの蝶結び教材では、結び目を作るところまでを10工程、その後の蝶結びを11工程に分け、全部で21工程として整理しています。
ここまで細かく分けたのは、手順を増やすためではありません。
一つの場面に含まれる動きを少なくし、「今、何をすればよいのか」を子どもが捉えやすくするためです。
また、単に順番を示すだけでなく、子どもが迷いやすい持つ位置や動かす方向を、目で確認しながら進められるようにしています。
21工程のすべてを一度に覚える必要はありません。どこまでできて、どの工程から難しくなるのかを見つけ、必要なところに戻って練習できることも、動作を分ける利点です。
何度見本を見せても分からなかった子どもにとって、「もっと練習する」のではなく、「分からない工程を見つける」ことが、最初の一歩になる場合があります。
小学校受験に向けて練習する場合
小学校受験では、ひも通しやひも結びなど、手先を使う課題が扱われることがあります。
受験では、ただ蝶結びを完成させるだけでなく、左右の輪や垂れの長さを整え、限られた時間の中で仕上げることが求められる場合もあります。
結び方を覚えたばかりの段階では、一つひとつの工程を思い出しながら手を動かすため、どうしても時間がかかります。直前になって速さだけを求めるのではなく、早めに練習を始め、まずは手順を迷わず進められる状態を目指しましょう。
そのうえで、左右の形を整えることや、途中で止まらずに結ぶことにも少しずつ慣れていきます。受験対策として取り組むのであれば、本番までに、一人で落ち着いて仕上げられるようにしておく必要があります。
よくある質問
Q. 蝶結びの練習は何歳から始めればよいですか?
5〜6歳頃は、一つの目安として紹介されることが多い時期です。ただし、蝶結びができるようになる時期には個人差があります。
年齢だけで決めるのではなく、紐を結ぶことに興味を示しているか、見本を見ながら手を動かそうとしているかも見ながら始めましょう。嫌がるときや、まだ動きを追うことが難しいときは、無理に完成を目指す必要はありません。
Q. 最初に作る輪は、右と左のどちらが正しいですか?
右と左のどちらで輪を作っても、蝶結びはできます。片方だけが正解というわけではありません。
ただし、輪を作る側が変わると、その後に紐を回す方向や通す向きも変わります。練習するたびに左右が変わると、子どもは次の動きを覚えにくくなるため、最初に作る輪は毎回同じ側に統一しましょう。
右利き・左利きだけで決める必要はありません。お子さんが動かしやすく、教える大人も一貫して見本を示せる側を選びます。教材を使う場合は、教材で示されている手順に合わせてください。
完成した蝶結びが縦向きになったり、ねじれたりする場合は、輪を作る側だけでなく、最初の結び目と、その後に紐を回す向きの組み合わせも確認します。
Q. 靴紐でも同じように練習できますか?
基本となる動きは共通していますが、靴紐は細さ、硬さ、滑りやすさなどによって扱いやすさが異なります。
結び方を覚える段階では、手元で動きを確認しやすい紐を使い、工程に慣れてから実際の靴紐でも試すと、負担を分けて考えられます。
Q. きょうだいで理解する速さが違っても大丈夫ですか?
同じ年齢や同じ家庭環境でも、難しく感じる工程は一人ひとり異なります。
きょうだいを比べるのではなく、それぞれが「どこまでは自分でできるか」を見てください。完成までの速さよりも、一人で進められる工程が少しずつ増えているかを確認することが大切です。
まとめ
蝶結びができない理由は、器用さや練習量だけではありません。
どの紐を動かすのか、どこを持つのか、どこへ通すのか、いつ手を離すのか。大人が無意識に行っている細かな判断が、子どもにはまだ見えていないことがあります。
まずは「できない」と一括りにせず、どこまではできて、どの工程で止まっているかを見てみましょう。
声かけや見本だけでは理解しにくい場合は、動作を細かく分け、持つ位置や動かす方向を目で確認できる教材を取り入れるのも一つの方法です。

