小学校受験の準備を始めると、「巧緻性」という言葉をよく耳にします。
巧緻性とは、手や指先を細かく使って物を扱う力のことです。
はさみで切る、紙を折る、貼る、ちぎるといった制作だけではありません。ひもを通す・結ぶ、クリップを留める、箸で物をつまむ、衣服や布をたたむなど、日常生活の中で行う細かな手の動きも含まれます。
「練習することがたくさんあって、何から始めたらよいのか分からない」
そんなときは、まず**「塗る・ちぎる・枠に合わせて貼る」**練習から取り入れてみてください。はさみも、今できるところから少しずつ練習していきます。
この記事では、巧緻性の中でも制作に使う基本動作を中心に、家庭での練習の進め方を紹介します。
一般的な知育教材で工作に親しみ、はさみやのりの使い方に慣れておくことも大切です。
ただ、小学校受験の制作では、切る・貼るだけでなく、ちぎる、折る、結ぶなど、さまざまな動作を使うことがあります。また、聞いた指示を覚えて作ったり、テーマに合わせて自分で考えて作ったりと、課題によって取り組み方も異なります。
そうした制作に向けて、まずは一つひとつの動作を丁寧に行い、繰り返す中で少しずつスムーズにできるようにしていくことが、家庭での基礎練習になります。
まずは「塗る・ちぎる・貼る」から
「塗る・ちぎる・貼る」は一見簡単そうですが、練習で見るポイントはいくつもあります。
最初の一回は、小さな枠を一つ塗るだけでも構いません。線からはみ出しているのか、枠の中に塗り残しがあるのかを見てみましょう。
塗り残しがあれば、「まだ白いところはあるかな?」と一緒に探します。一度にすべてを直そうとせず、まず一つ、意識することを決めて練習します。
ちぎるときは、線のすぐ近くを両手の親指と人差し指でつまみ、左右の親指の爪を近づけます。その位置から少しずつちぎり、進むたびに指を持ち替えます。
自由に紙をビリビリと破ることに慣れていても、決められた線に沿ってちぎるには、紙を持つ位置や力の入れ方を調整する練習が必要です。
のりづけでは、真ん中だけでなく端や角まで薄くのりを塗ります。枠の位置や形を見て紙を置き、端までしっかり押さえて貼りつけましょう。
貼る練習でも、「今日は枠を見て貼る」「今日は端までのりを塗る」など、見るポイントを絞ると、できるようになったことを確かめやすくなります。
はさみは1回切りから。できるところから少しずつ
はさみの練習も、最初から丸や星などの形を切る必要はありません。
まだ開いたり閉じたりする動きに慣れていない場合は、刃を一度閉じれば紙を切り離せる「1回切り」から始めます。
そこから、例えば、
1回切り → 直線 → ジグザグ → 曲線
と、少しずつ進めます。
ここで大切なのは、「はさみが使えるか」だけで判断しないことです。
- 直線なら線に沿って切れる。
- ジグザグになると角でずれる。
- 曲線になると切り口がガタガタになる。
このように、どこまでなら丁寧にできるのかを見ながら課題を選びます。すでに直線を切れる子なら、必ず1回切りからやり直す必要はありません。
角を切るときの手の動きもポイントです。
はさみを持つ手を大きくひねるのではなく、**紙の向きを変えながら切ります。**ジグザグの折れ曲がるところでは、いったん切る動きを止め、刃を開いて紙の向きを変えてから、次の線に沿って切り進めましょう。
こうした基本的な手の使い方も、直線やジグザグなどの簡単な課題だからこそ、落ち着いて練習できます。
紙の厚みも変えながら練習する
形だけでなく、紙の厚みを変えることでも、練習の難しさを調整できます。
はさみでは、薄くてふにゃふにゃする紙をうまく支えられない場合、少し張りのある紙を試してみます。慣れてきたら薄い紙でも練習し、紙を支える手の使い方を確かめましょう。
ちぎりでは、まず少ない力でちぎれる紙から始め、慣れたら少し厚い紙にも取り組みます。
ただし、厚すぎてはさみを閉じにくい、力いっぱい引っ張らないとちぎれない場合は、その紙で無理に進めず、扱いやすい厚みに戻します。
「できるようになったら、すぐにもっと難しい形へ」と進むだけでなく、同じ課題を違う紙で繰り返してみるのも一つの練習方法です。
1日5分、10分。楽しく続けるための工夫
小学校受験の家庭学習では、ペーパーやお教室の宿題、運動など、取り組みたいことがたくさんあります。制作練習も、1日5分、10分を目安に、取り入れやすい量から始めてみましょう。
今日は直線を数本。今日はちぎりを1枚。今日は色塗りだけ。それくらいでも構いません。
保護者が練習用紙を1回分ずつ使いやすい大きさに切り分け、小さなファイルやケースに入れておくと、空いた時間にすぐ取り出せます。持ち歩けば、落ち着いて座れる場所で、待ち時間にちぎりや色塗りをすることもできます。
基本の動きに慣れてきたら、花、くま、きのこ、ハートなど、子どもが「やってみたい」と思える絵柄も取り入れましょう。「今日はどれにする?」と選んでもらってもよいですね。
切ったりちぎったりした形を台紙に貼れば、作品として残せます。**すぐに始められる準備と、できあがる楽しさ。**どちらも、こつこつ続けるための工夫です。
慣れたら「塗る・ちぎる・貼る」を組み合わせる
一つひとつの動作が安定してきたら、複数の動作を組み合わせます。
- 塗る → ちぎる → 枠に合わせて貼る
- 塗る → 切る → 貼る
- 折る → 切る → 開く
最初は「塗る・貼る」の二つから始めるなど、できる動作を組み合わせて工程を増やします。
さらに慣れてきたら、短い指示を聞いてから取り組む練習にも広げられます。
まずは「丸を赤く塗りましょう」など、一つの指示から。できるようになったら、
「三角は黄色、丸は赤に塗りましょう」
「丸を赤く塗って、ちぎって、枠に貼りましょう」
など、色や形の指定、作業の順番を少しずつ増やしていきます。
手の動かし方に加えて、何をするのか、どの順番で進めるのかを聞いて取り組む経験も重ねていきましょう。
丁寧にできるようになったら、時間を測ってみる
一つひとつの動作が丁寧にできるようになってきたら、ときどき時間を測ってみます。丁寧さを保ったまま、少しずつスムーズに進めることを目指しましょう。
時間を比べるときは、形の大きさや紙の厚みなど、条件をそろえます。
練習した紙も何枚か残しておくと、「前より線からはみ出さなくなった」「曲線がきれいになった」など、仕上がりの変化を親子で確認できます。
「ここまでは線に沿って切れたね」「端までしっかり貼れたね」と、できるようになったところを具体的に伝えましょう。
速さだけでなく、手の動かし方や仕上がりにも目を向け、少し前のその子と比べて成長を確かめます。
毎日の基礎練習に「はさみ・ちぎりトレーニングセット」
ココエデュの「はさみ・ちぎりトレーニングセット」は、1回切りから直線、ジグザグ、曲線、図形や絵柄へと、少しずつ練習を進められる教材です。
練習用の色紙は、薄口・厚口・最厚口の3種類。はさみでは厚口から薄口へ、ちぎりでは薄口から厚口・最厚口へと、取り組む様子に合わせて紙を変えながら練習できます。
切る・ちぎるだけでなく、折る、塗る、貼るといった練習にも広げられます。


